身体強盗再び 第2話「強盗、自分の身体に戻る。」

作:onaona

 

『加奈』はテレビをつけると、あるニュースが流れていたので目を堪えながら
それを見ていた。
 
刑務所内で囚人たちの手によって大火災が発生したらしい。
それにより多くの囚人が逃亡したようだ。そこには中年男性と身体が入れ
替わった本物の遠藤加奈がいるところだが、どうやら彼も紛れて外に
逃げたらしい。
 
ニュースで逃亡者の名前が速報で伝えられた。
 
『石柿亮司』という名前・・・・・・そう、それは加奈と身体が入れ替わった
銀行強盗の男性の名前だった。こうして再び自分の名前を聞くことは想像して
いなかったことだろう。
 
彼らはこの地域周辺に逃亡しており注意を呼びかけていた。
 
「これはまた大変なことになったものだな。」
 
『加奈』は半分無関心そうな素振りで言った。
 
次の日、『加奈』は起き上がりテレビや新聞を見ると昨日の事件が大きく
取り上げられていたのだが、自分にはもう関係ないといった感じで聞き流した。
 
「いってきまーす。」
 
「いってらっしゃい、気をつけてね。」
 
「はぁーい♪」
 
そうして、いつも通りに遠藤加奈として学校に登校した。
 
「さてと今日もコノ身体でいっぱい嫌らしいことしようかな、へへへ。」
 
『加奈』は不気味な笑みを浮かべながら学校まで歩いていった。
すると途中で前に誰かが立っていた。
 
それはあの中年男性だった。
中身は本物の加奈で自分の身体と入れ替わった男・・・・・今の『加奈』を
探すために紛れて刑務所から逃亡したらしい。
 
『石柿亮司』・・・・・・彼(加奈)は『加奈』が学校に行くのを待ち受けていた。
 
「おおっ、おまえか。なつかしい顔だな。元気か。俺のコノ身体は前よりも
嫌らしくなったぞ、お前には特別にみせてやろう。へへへ。」
 
加奈(亮司)は制服のリボンを外し、ブラウスのボタンを上から順に外し始めて胸を
露出させようとした。
 
「やめてっ、そんなことしないでっ!!」
 
「なんだよ、いいじゃないか。減るもんじゃないし。」
 
「いい加減にしてっ。私の身体返してよっ!!」
 
「ん?それはできない相談だな。この身体はもう俺のモノなんだ。あきらめろ!!」
 
「返してっ、返してったらあああああっ!!」
 
そのとき本物の加奈の勢いに押され、二人はコンクリートの地面に叩きつけられ
頭を打った。
 
「あっ、いてて、なにすんだ、いきなり!!」
 
そこで違和感に気がついた。声が太くなっている。もしやと思い、鞄にしまってある
手鏡をみると中年男性の姿がそこにあった。そう、それは自分の元の姿だった。
先ほどのショックで再び二人の身体が入れ替わり、元に戻ってしまったのだ。
 
「こ・・・・これは・・・・・わたし・・・・もどったの?」
 
加奈は心の中から徐々に嬉しさと安心感がこみ上げてきた。
 
「おっ、おい、どうなってんだ、俺の新しい身体返せっ!!」
 
「やっ、やだああっ、やめてっ!!」
 
そのとき・・・・・・。
 
「そこまでだ!!」
 
警察が来てしまった・・・・。
 
「くっ、くそっ。こんなことになるとは・・・・・。」
 
そう言い残し、ダッシュで逃亡した。
 
「まっ、まてっ!!」
 
亮司の姿はすっかり見失ってしまったが、遠藤加奈は再び本来の自分の身体に
戻ることができて心の中から喜んだ。
 
 

 
 
「ちっ、こうなるとは思わなかったな。しばらく、ここで身を隠すしかねぇ。」
 
亮司は山奥にまで逃げ込んだ。警察はいなくなり、少し休むことはできた。
 
「これから、どうすっかなー。このまま逃げ続けるのも時間の問題だ。
いづれ捕まってしまう。まいったな。」
 
彼はひたすら険しい山道を歩いた。
 
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・疲れた。どこか、休めるとこは・・・・・
はぁ・・・・はぁ・・・・・・。」
 
男は息を切らしながら歩いた。
すると数十分後、目の前に古い小屋が見えたので彼はそこで休むことにした。
そこは今は誰も出入りしておらず、埃まみれだった。
 
「はぁー、あの娘、今なにしてるのかな。また入れ替われないかな。」
 
亮司はしばらく加奈になっていたため、前よりも弱気になっており、
身体の疲れのあまり急に眠くなり床に横たわった。
 
彼が目覚めたのは午後5時頃だった。今の時期ではすっかり暗く、
冷え込んできた。
 
「すっかり暗くなったな。どこか食料でも調達しに行くか。」
 
彼は小屋を出て山道を降りていった。そしてしばらく歩くと近くにコンビニが
あったのでそこに入ることに決めた。もちろんお金は持っていないが万引きか
店員を脅して食料を手に入れることを考えていた。
 
だが、彼がそのコンビニまで歩こうとしたときに道端で元に戻った加奈とバッタリ
会ってしまった。
 
「あっ。」
 
「あわわっ!」
 
加奈は亮司を見てとっさに逃げようとしたのだが、彼に手を捕まれて逃げれなかった。
さらにもう片方の手で口元を塞がられ、悲鳴を上げることすらできなかった。
 
「むぅっ、むぐぐぅ〜〜。」
 
「大人しくしてろよ、俺についてこい。」
 
亮司は加奈の手を引っ張り、人があまり通りかからない道に入った。
そこは急な斜面になっており、近くに階段があった。
 
「よし、ここでいいや。さっそくやるぞ。」
 
「えっ?」
 
彼は加奈の身体に抱きつき、足をわざと滑らせた・・・・・。
すると二人は勢いよく階段から落ちた。
 
 
 

 

inserted by FC2 system