山奥の研究所  第4話「蘇った双子の姉」

 

『雅美』は雅美の始末を終えた後、彼女の服を奪い、隆志のいる部屋に戻った。
隆志は未だに複製した雅美の着ぐるみを着て気絶したままだった。『雅美』は彼を起こした。
 
「隆志・・・・・・隆志・・・・・・・起きて!!」
 
すると、隆志は起きはじめた。
 
「あれ、俺なにしてたんだっけ?」
 
「何も覚えてないの?」
 
「ああ、すまない。ここはどこなんだ?」
 
「ここは研究所よ。山奥の。」
 
「なんでこんなところいるんだ、俺ら。」
 
「そりゃ、私があなたたちを誘拐してきたからよ。私は本当は雅美じゃないの。
雅美の複製した着ぐるみを着ている偽者なの。」
 
「なっ、なにいってるんだ、雅美。雅美だろ。」
 
「仕方ないわね、みなさい、今のあなたの姿を。」
 
『雅美』は鏡で今の隆志の姿をうつした。
 
「こっ・・・・・これは?」
 
「ふふふ、ようやく気がついたようね。あなたも雅美の複製した着ぐるみを着ているのよ。」
 
「そっ・・・・・・そういえば自分の声がなんだか違うように聞こえる・・・・・。」
 
「今頃、気づいたんだね。あなたって人は本当に鈍いわね。まぁ、いいわ。あなたとも
もう用済みなんだし。」
 
「ま、雅美はどこへやった?」
 
「ああ、彼女ならもう始末したわよ。用済みだったからね。最後に彼女、私と
セックスしたのよ・・・・・・とても気持ちいいって。」
 
「雅美を・・・・・・雅美を返せっ!!!」
 
「あら、無理よ。死んだ人は生き返らないもの・・・・・・・・・それに本物が消えた今
あなたが雅美ちゃんなんじゃないのかな。雅美になってるあなたなら別に家に帰して
あげてもいいわよ。」
 
「ふざけるな!どうしてくれるんだ!」
 
「あら、怖いわね。私、すぐに怒鳴る人嫌いなの。あなたにはすぐにでも雅美ちゃんに
なってもらうわ。」
 
『雅美』は薬品の入った注射器を取り出し、彼の腕に注射した。
すると彼は眠くなり始めた。
 
「ふふふ。催眠効果のある薬をあなたに注射したの。今から私の言うことを聞く
のよ。・・・・・『あなたの名前は榎本 雅美、27歳、1人暮らし、彼氏である
隆志とは去年のクリスマスに別れてそれ以来あってない』・・・・・・・。」
 
「おれ・・・・・・・・わたしの・・・・・・・なまえ・・・・・・えのもと・・・
・・・まさみ・・・・・・27さい・・・・・。」
 
彼は見事に催眠術にかかってしまった。
 
「ふふふ、この催眠術は永遠に解けないわ。あなたはこれから榎本 雅美として生きる
のよ。」
 
『雅美』は雅美となってしまった彼に適当に服を着せて車で連れ去った場所・・・・・
コンビニ付近で降ろした。
 
彼は呆然として『榎本雅美』として彼女の家に帰った。
 
「さてと、研究所に戻るとするか。」
 
『雅美』は車を運転し、その場を去った。だが、研究所の近くでセーラー服を
着た少女が歩いていた。誰かを探しているようだ。
 
『雅美』はその少女に声をかけた。
 
「ねぇ、そこの嬢ちゃん。こんなところでどうしたのかな。」
 
「あぅ・・・・・・・私、お姉ちゃんを探してるの。1週間前に、この山奥に入ったきり
戻ってこなくて、親が警察に捜索願出したんだけど・・・・・・・見つからなくて
     ・・・私、お姉ちゃん大好きだから自分の手で捜そうと思って・・・・・うぐうう
うぅぅうぅっ!!!」
 
その少女は泣きながら答えた。
 
「そうなの。あなた、お姉さんいなくなったの。それは気の毒にね・・・・・・・。
私も一緒に探してあげようか。」
 
「えっ、本当ですか?」
 
「ええ、いいわよ。あなた、お姉さんの写真か何かもってる?」
 
「うっ、うん。写真なら・・・・・。」
 
少女は制服のポケットからプリクラを1枚取り出した。
 
「これは・・・・・・。」
 
「私たち実は双子なの。左にうつってるのがお姉ちゃん・・・・・・。」
 
『雅美』は思い出した。1週間くらい前にこの辺に迷い込んだ少女を研究所に監禁して
着ぐるみ化の実験を試みていたのだ。そのとき実験は失敗しており、その少女は屍
と化してしまったのだ。
 
『雅美』は今まで複数の人間を拉致していたために今まで思い出せずにいた。
 
『雅美』は不気味に微笑んだ。最初はその少女に協力したフリをして襲うつもりだった
のだが、予定を変更し、その少女の姉に成りすますことにしたのだ。
 
少女の血液で着ぐるみを複製させても良いのだが、『雅美』はそのときその少女の姉の
血液を保存していることを思い出し、それを使って少女の姉の身体に似せた着ぐるみを
複製させることにした。
 
「この建物がなんだか怪しいわね。私はこの中を探すから、あなたはこの付近を捜し
なさい。」
 
「うん、ありがとう、おねえさん。」
 
『雅美』は研究所の中へ入り、あの少女の姉の血液が保存されている場所へ向かった。
そこには彼女の遺骨や着ていた制服が残されていた。
 
「おっ、あった。ここだ。まだ無事のようだな。」
 
『雅美』はその血液を取り出し、薬品と混ぜた。そして化学反応が起こり・・・・・・・。
 

 
「おねぇーちゃん、おねえーちゃんっ!!」
 
少女はひたすら自分の姉を捜していた。
そのとき・・・・・・。
 
「由美・・・・・・・。」
 
その少女は後ろを振り返るとセーラー服を着たその少女と瓜二つの少女が現れた。
 
「おっ、おねえちゃん!!」
 
「由美、私を捜しにきてくれたんだね。」
 
「そうだよ、だってお姉ちゃんのことが大好きなんだもん。」
 
「ええ。私も由美のことが大好きよ。・・・・・・・これから由美に面白いモノみせて
あげるね。私の後についておいで・・・・・。」
 
「うっ、うんっ♪」
 
姉は不気味な笑みを浮かべながら妹を連れて研究所の中へ入っていった。妹は何も
知らずに笑顔で姉の後をついていった。
 
 
 
 
―第5話へつづく―
 
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